【現役医師連載】今年の美容外科業界のトレンドは?<2023年>

こんにちは、2023年になりました。新年あけましておめでとうございます!皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回は、毎年恒例の「新年のトレンド予測」をしていきたいと思います。

2023年も美容外科業界は拡大の予想

美容医療の市場規模は、地球レベルで拡大を続け、2030年くらいまでは年平均成長率10%弱で推移していくと予想されています。

これはやはり、スゴいポテンシャルですよね。

先進国は当然ながら、発展途上国でも若く健康的に見られたいという欲求は高まり、特にインドの成長が著しいそうです。国際美容整形外科学会(ISAPS)の発表によると、インドは世界レベルで非外科的美容施術を行っている国のトップ5に入っているとの事です。

成長著しい東南アジアですが、彼らはやはり美容外科手術が進んでいると言われている韓国に、メディカルツーリズムとして手術を受けに行く事も多く、今後もし日本の美容外科手術の技術が確かであるならば、外国からの顧客流入もトレンドとしてはあり得るのかもしれません。

そうなった時、いち早く動けるような体勢を整えるべく、土台を今のうちから作っておくのはチャンスを掴むために必要になるかもしれませんね。

やはり美容は「非侵襲的処置」のセグメント成長が著しい

これから中でも成長率が高いセグメントは、非侵襲的処置とされています。痛みが少なく、効果が得られ、低コスト。具体的にはボトックス、軟組織フィラー、ケミカルピーリングなどです。

最終的に侵襲的処置、いわゆる外科手術に移行する可能性のある顧客も、基本的には必ず非侵襲的処置から入ります。経営という視点から見れば、美容外科手術をする「将来の顧客の入り口」が非侵襲的処置であるため、集客という意味でも重要なポジションになるでしょう。

美容医療の裾野が広がりつつある、顧客セグメントの整理が必要

美容外科手術そのものも、昔に比べるとかなり一般化してきました。非侵襲的施術がそれを後押ししているのは間違いありません。

これは何を意味するのか。美容医療の裾野が広がったという事です。

美容医療の裾野が広がる事は、業界にとってプラスではあるものの、経営のやり方にも変化が求められるので注意が必要です。

極端な事を言えば

1.単価が低い、非侵襲的
2.単価は普通、侵襲的
3.単価が高い、非侵襲的
4.単価が高い、侵襲的

の4つの顧客セグメントが出現したと考えられます。

1の顧客セグメントは、最近広がってきた裾野の部分。いわゆる美容医療への入り口です。

多くは1に止まりますが、中には2、3、4と進行していく「将来の顧客」も含まれるため、一概に無視する事はできないのがこの顧客セグメントです。

このセグメントは経営上、ボリュームが多く、マス広告などで顧客獲得へつなげやすいものの、単価が低く競合も多いため、利益率が低いセグメントです。最初からこのセグメントを攻めるというよりは、経営母体が大きくなってきた大手が、仮に事業セグメント単体で赤字だとしても「広告費」と割り切って、出血しながら将来の顧客を抑えに行く、そういうセグメントになると予想できます。

2のセグメントは、1から侵襲的な処置に移行したセグメントです。人が変わっているわけではないため、財布の中身は変わりません。単価はそれほどあげる事はできないものの、侵襲的な処置への興味があるセグメントです。

このセグメントは、1よりも利益率が高いため、1から2への移行がスムーズであった場合には狙って良いと思いますが、こちらもそれほど高い利益率は出せないでしょう。

3のセグメントは、富裕層です。

富裕層も必ず非侵襲的、侵襲的と両方存在しますが、その違いは支払い能力です。富裕層に対して支持を得られるような美容医療を展開し、この3と4の顧客セグメントを取得する事ができるのであれば、経営上はかなり強いと言えるでしょう。

AIによる肌診断、オーダーメイド治療…どうすれば良い?

昨今ではAIによる肌診断だとか、それを元にしたオーダーメイド治療だとか、色々言われていますが…
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まずAIによる肌診断。これは顧客からすれば「やってみたい」とは思うかもしれませんが、これが理由で集客に繋がるとか、そういった可能性は薄いのではないかと思います。

新規顧客を得るための呼び水という触れ込みで販売する美容メーカーの代理店は多いですが、どちらかと言えば逆で、既存顧客に対する動機付けとしての役割くらいにとどまるのではないでしょうか。そうなると、正直必須のアイテムとは言い難いでしょう。

しかしその先にあるオーダーメイド治療を、例えば上記の3〜4の富裕層顧客セグメントに対して行う事に価値を見出すのであれば、ツールとしては必要になります。

全くもって新しい、業界を刷新するほどの影響はないとは思いますが、無視するのは危険かな、といったところでしょうか。

しかし地方などの競合が少ないエリアであれば、やはり最新式の肌AI診断は、感度の高い顧客にとっては魅力的に見えると思われ、そのコストパフォーマンスは高く発揮される可能性はあるでしょう。


▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。

URL:https://bluestorage.co.jp/