【現役医師連載コラム】名医になる最も手っ取り早い方法

名医になる方法

読者の皆様、こんにちは。美容クリニックに勤務している大石です。

美容クリニックに勤務していると、色々なドクターに会います。年齢、出身などはもちろん、様々な経歴、年代の先生がいらっしゃいます。

今回はそんな中で、いわゆる名医になるにはどうしたら良いのか、という事についてお話します。

スーパードクターにならなくても良い

世の中には、名医と言われる先生の中でも、さらに目立つ存在、スーパードクターがいらっしゃいます。

具体的には

手術がものすごい上手
デザインが芸術的
手技が安定していて速い
ほぼ見逃しが無い

等々、様々な分野でご活躍でしょう。

しかし、ことクリニックレベルにおいては、求められるのはスーパードクターではありません。

厳密に言えば、スーパードクターにならなくても、クリニックの医師としてやっていく上で重要な事は、少し別のことかな、とも思います。

名医になるには「社会常識」を身につけよう

クリニックの医師としてある程度名医と呼ばれる存在に近づくには、どうしたら良いでしょうか?

僕は「当たり前のこと、社会常識的なことをできるようになる事」だと思います。

例えば、挨拶。

偉い先生や、技術がもてはやされる先生に限って、挨拶がおろそかになっているなあ、という印象が、僕の短い人生経験ですが、感じ取られます。

確かに、医師がいなければクリニックは成り立ちませんし、医師がキーパーソンなのは間違いありません。

しかしながらそれに天狗になって、患者さんやお客様、スタッフへの挨拶がおろそかになっているようでは、名医とは言えないでしょう。

逆に言えば、キチンと気持ちよく挨拶をする。これだけでも、ある種の網をかいくぐって、選ばれたドクターの仲間入りをする事ができると思います。

思いのほか、挨拶をしっかりできる先生は、いらっしゃらないと思いますので。自戒を込めて。

僕自身も、挨拶には気をつけています。出勤してスタッフ全員、1人1人に挨拶をし、退勤する時ももちろんします。

初めましてのお客様には、キチンと初めましてと始めてから自己紹介を簡単にします。

人間として、社会的生物として本当に基本的な事で、おそらく読者の先生方は皆さん気持ちよく挨拶をされると思うのですが、今1度自分の挨拶はどうか、チェックしてみて、至らない点があれば改善していくのがオススメです。

例えば、話しかけやすさ。

医師というだけで、緊張する患者さんやお客様は、多くいらっしゃいます。日常的に医師と関わる看護師さんやスタッフさんでさえ、そういう方もいるわけですので、当たり前ですよね。

そういった環境の中、クリニックの医師が話しかけにくい雰囲気をまとっていたら、いかがでしょうか。

僕は、話しかけにくい雰囲気をまとっているだけで、医師としては名医には絶対なり得ないと思います。

なぜならば、その「話しかけにくさ」が原因で、事故やクレームにつながりかねないからです。

患者さんやお客様に、最も近いのは看護師です。彼らは一番最初に、違和感や異常を察知する可能性を秘めています。もし彼らが、医師の「話しかけにくさ」が原因で、医師にその事を報告する事をためらってしまっていたら、どうでしょうか?

本来であれば、事前に察知して先手を打てたかもしれない事柄を、見逃してしまう事につながらないでしょうか。

ハインリッヒの法則というものがあります。1件の事故の裏には、約1000件のヒヤリハットが隠されているという話です。つまり0.1%の確率で事故につながるわけですが、これがヒヤリハットをきちんと報告される場合と、そうでない場合では、その確率は異なってくる事は自明です。

現代の医療はクリニックレベルにおいてもチーム医療であり、チーム全体としての成果を上げる事が重要です。当然、カウンセラーや看護師との連携が必須になるわけですが、医師が「話しかけにくい」雰囲気をまとっていると、コミュニケーションエラーが起きて、事故につながりかねません。

人間誰しもが失敗する可能性があり、エラーは存在します。それをゼロにするのは不可能ですが、医師の「話しかけにくさ」が原因で、コミュニケーションエラーが発生し、最終的に事故発生率が高まってしまうのは、未然に防げただけに、残念ですよね。

例えば、スタッフとの信頼関係。

チームとして成果を上げるには、お互いの信頼関係が必要です。

看護師さんやカウンセラー、受付スタッフと信頼関係を構築するための努力をする事も、クリニックレベルでの名医の条件だと思います。

傲慢な態度を取らない、威圧的な事をしないなど、パワハラはもちろん、セクハラにも気をつけながら、日常会話を重ねましょう。

心理学用語で、単純接触効果という心理効果が証明されています。

単純に接触した回数が多ければ多いほど、親近感が沸いて信頼につながるという心理効果です。

1年いるけど、たまーにしか話さない先生よりも、半年しかいないけどよく話す先生なら、後者の方がスタッフからは単純接触効果で信頼が生まれている可能性が、高いと言えます。

もちろん、スタッフとの適切な距離感も大事ですが、遠く離れすぎている先生が、結構若い先生を中心に、美容クリニックでは多い印象です。

僕は、例えば診察室のゴミは自分で捨てたり、掃除をします。

本来であれば看護師さんやスタッフがやってくれますが、自分の持ち場は自分が責任持ってやる、という態度を見せる事で、スタッフの労働負荷を減らせますし、スタッフの懐に入り込む余地が生まれます。

そこから会話を重ね、少しずつ信頼関係を構築していく。

こういった「医療以外の常識」を、あたりまえにやる事。積み重ねる事。

これが、名医になる最も手っ取り早い方法だと、思っています。

もちろんそれだけではダメなので、勉強して最新の医学知識がある、というのが大前提ですけれどね。


▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。

URL:https://bluestorage.co.jp/