【現役医師連載】不況に備えろ!美容外科医がやるべき5つの対策

もし今の世の中が不況になったとして、あなたのクリニックは大丈夫ですか?

今後の経済の見通しは各国で暗く、あまりよろしくないインフレが起こりつつも、インフレを抑えるべく金利を上昇させており、一般市民の生活は苦しくなっております。

日本でも円安と資源高により、日本人にとってのエネルギー価格が急騰している2023年現在です。40年ぶりに物価が上昇し、本格的にインフレが訪れ始めている日本ですが、これからの経済状況に関しては確かな事は言えない、少なくとも今までのようにいかない可能性が出てきています。

何しろ、日本はここ数十年ずっとデフレであり、物価が上がるなんて事は考えられませんでしたから…

物の値段がどんどん上がっていく様子に、日本全体が戸惑っている感覚さえあります。しかしこの日本の横並び気質により、企業がなんとか物やサービスの値段を上げずに済んできているものの、それも限界。おそらく横並びのまま、各企業は値上げを続けると予想されています。

まさに、不況になってもおかしくない。そのような経済状況です。

今回は、そのような経済状況の中で、仮に不況になったとして美容クリニックはどう対応するべきなのでしょうか?

そもそも企業はどうやって倒産する?

資本主義の世界で、そもそも企業はどうやって倒産するのでしょうか?

赤字になったから?
時代が変わった?

どれも違います。

答えはたった1つです。手元のお金が無くなったから。

手元のお金がなくなれば、仮に黒字でも支払いができずに倒産します。

過去最高益を出していたとしても、手元の現金を全て在庫に変えてしまって、来月の支払いができなければ倒産します。しかしながら、そんな事は現実には起こりません。このような事をすれば倒産するのは、誰がどう考えてもわかるからです。

しかし、例えば過去最高益が出ていて、ドンドン売れる。ドンドン作る。そういう状況下で不況になって、パタッと売れなくなる。そうなると何が起こるか、在庫を大量に抱えるもキャッシュが枯渇して、それらは当然売れないわけですから、キャッシュに変換しなおす事も難しくなります。

それでいて過去最高益ですから、税金の支払いは後から大量にやってきて、支払いが滞る…なんて事になるケースがあります。

このように、どのような状況にあっても

とにかく手元のキャッシュを厚くしておく

 
事は、不況に対する備えとしては最高の方法です。

支払いが滞る可能性を減らせるからです。

クリニックが手元の現金を増やす方法

クリニックが手元の現金を増やす方法は

1.銀行から借りる
2.売上を早期に回収する
3.支払いを遅らせる
4.コストをカットする
5.利益率を高める

の5つがあります。

このうちコストカットは、わかりやすいですよね。無駄なコストをカットすれば、その分蓄積するキャッシュは増えていきます。

しかしこれらは実行したとしても、時間で積み上がっていくもの。1ヶ月や2ヶ月やったところで大した効果は出ません。

利益率を高める、というのは重要な視点です。間違えてしまうのは「売り上げを増やす」事と混同してしまう場合です。売上を増やすために、新しい商品を開発したり、在庫を抱えたり、広告を打ったりすると、むしろ手元の現金は減ってしまう事が多いです。

そうではなく、稼働率の低い資産(人を含む)が無いかチェックして、その稼働率を高めて追加コストなく利益を出す、つまり利益率を高めるのが大事です。

これらはいずれも長期的には効果を出しますが、短期的には効果が出ません。短期的に効果を出すにはやはり

・売上を早期回収
・支払いを遅らせる

事が、手っ取り早いです。

極端な事を言えば、売上が月3000万円、支払いが月2000万円あったとしましょう。これを売上を1ヶ月早く回収し、支払いを1ヶ月遅くしてもらいます。

そうすると、未来に入ってくるはずだった3000万円が先に入ってきて、支払う予定だった2000万円が来月に伸びますから、手元に5000万円が生まれます。この5000万円は何も触らなければ、ずっと残り続けます。そのまま次の月は3000万円が入って2000万円が出ていく、というサイクルになるだけです。

そうなると、極論で言えば2000万円のコストの2.5倍ですから、2ヶ月半売上がゼロだとしても、キャッシュはその5000万円から支払う事ができるはずです。

不況に対する備えとして、手元のキャッシュを厚くする方法としては効果的だと言えます。

銀行からは不況になる前にお金を借りておく

しかし、実際は実行難易度が高いのも事実。そこでやはり最も簡便で効果が大きいのは、銀行からの借り入れです。

よく銀行に借り入れをするとなると

お金に困っているから借りにいくんでしょう?

というイメージが、あると思います。

しかし実際は逆です。経営として正しい判断は、状態が良い時に、良い条件で先に借りておく事です。

困ってから借りにいっても、当然貸す側は貸しにくい。貸す場合も条件が悪かったりします。

それであれば、必要は無いかもしれないけど好条件で借りておいて、口座に寝かせておく。金利は経営上の保険だと思っておく。

そうする事で、いざという不況が来た時も耐えられる経営体力を残存し、生存できる確率を高めてくれる事でしょう。


▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。

URL:https://bluestorage.co.jp/